映画レビュ〜🎬

 

「それだけが、僕だけの世界」

かつてボクシングのアジアチャンピョンであったジョハと、サヴァン症候群を患うピアノの天才の弟のジンテとの、家族愛の物語。長い間離れ離れだった兄弟の突然の共同生活に戸惑いを隠せないジョハと、兄に対して恐怖心を覚えるジンテ。
物語が進んでいくにつれてどんどんお互いが心を開いていき、ジョハの方からジンテへ歩み寄っていく様子に感動しました。
お母さんとも疎遠だった兄ジョハが、お母さんとも弟ともどんどん心の距離を詰めていき、その背景には弟ジンテの美しいピアノの旋律が常にありました。
最初にジンテがベートーヴェンの月光ソナタ第三楽章を弾いていたシーンには鳥肌が立ちました。映画のクライマックスでの、コンクールで披露したチャイコフスキーのピアノコンチェルト第1番にも胸を打たれました。
ジンテ役のパク・ジョンミンさんが努力して、自らの演奏で映画の撮影に臨んだというエピソードには驚愕しました。ファンになってしまいそう...

 

「グリーンブック」

映画館で一番泣きかけた映画。あまり映画で泣くことはないのですが、この作品は危うかったです..笑
天才黒人ピアニスト、ドクター・シャーリーのコンサートツアーの為に、車の運転手へと任命されたイタリア系用心棒のトニー。人種差別が酷い現代、黒人であるシャーリーの扱いは、例え天才ピアニストであろうとも酷いものでした。
しかし、どの場所でもシャーリーの演奏するピアノは本当に素晴らしいものでした。私がもっとジャズ音楽に詳しかったら、きっともっと映画そのものを楽しめたのだろうなと後悔したほどです。
トニーは結構暴力的なシーンが多かったのですが、最初こそ自分のエゴの為の暴力だったものが、旅をしていくにつれ、シャーリーを守る為のものに変化していくのがよくわかり、それにも涙しそうになりました。
シャーリーの素晴らしさを必死に伝えようとしていたトニーの姿勢は本当に格好良くて、スーパーヒーローのようでした。
また、シャーリーの溢れる気品、常識あるマナー、美しすぎる立ち振る舞いにもうっとりしてしまいました。どんな酷い扱いを受けても、相手を侮辱することなく大人な対応をしているシャーリーの姿があまりに切なくて、眩しすぎて、なんどもなんどもウルウルしてしまいました。
音楽を演奏する楽しさを改めて教えてくれた作品。また、言葉一つでその人の人生を大きく変えてしまうのだということも再確認できた作品です。

私もシャーリーとトニーのように、強く、丁寧に、音楽を愛して生き続けたい。

 

「へレディタリー《継承》」
私が今まで見たホラー映画の中で、一番ゾッとしたし一番恐怖を感じた作品でした。
今年に入って三回は見ました。何回見ても全く同じシーンでゾッとしてしまう...
また、この作品で使われている楽曲も非常に不気味で、不安を煽るメロディでした。
グラハム家に立て続けに起こる悲しい出来事、その背景にある衝撃の事実も、何度見ても驚きを隠せません。こんなにこの作品に恐怖を感じるのは、この作品の一つ一つのシーン、どこを切り取っても美しすぎるからなのかなと思います。本当に幻想的で美しい映画です。そんな美しい映像と、恐ろしい真実、恐怖心を煽る音楽がマッチしていて、一層怖さに拍車をかけてきます。ホラー映画として非常に大好きな作品になりました。

 

「愛がなんだ」
この映画を見たとき、私もタイトルのように”愛ってなんだろう?”と思っていましたので、この映画を見ることで何か答えが見つかるような気がして、鑑賞するのを楽しみにしていました。
結果、愛というのは何なのか、答えはわかりませんでした。それでも、岸井ゆきのさんと成田凌くんが繰り広げていく恋愛ストーリーは、見ていて非常に焦ったく、切なくて、でも幸せで、如何しようも無い喪失感さえも感じる、何とも不思議な感覚に陥る映画でした。“エモい”という言葉がよく似合う映画だなと感じました。
名前のない関係を続ける、気怠くて曖昧な男女のラブストーリー。どうしてみんな、そういう恋愛ドラマにはまってしまうのだろう。

 

羊と鋼の森
ピアノを演奏する側の人間としての感想は、音楽をやっている人なら絶対に鑑賞してほしい作品です。
ピアノは本当に気まぐれな楽器です。そして、弾く人によって好みの音があり、好みの打鍵があります。演奏者自らが満足いく演奏ができるかできないかは、演奏者の努力はもちろんですが、ピアノを調律する調律師さんの耳と腕に、全てがかかっているようにも感じます。
映画の世界観、訳者による一つ一つのセリフ、久石譲さんと辻伸行さんによって奏される挿入曲、総括して美しいの一言に尽きます。
ピアノについてもっともっと深く追求したくなる作品でした。時間を見つけて小説も読んでいきたい。

 

「Us」

さすがジョーダン・ピエール監督。非常に面白い作品でした。
悪魔よりもゾンビよりも、何よりも一番怖いのは生きている人間。
ゲット・アウトを初めて鑑賞した時、作品を取り巻く不気味さが一番強く印象に残っていました。今回の「Us」の予告にもある、とある家族が暗闇の中手を繋いでこちらを見ているシーンは、ゲット・アウトを悠に超えた不気味さに加えて、焦燥感さえも感じました。
クライマックスで明かされる真実には、開いた口が塞がりませんでした。私たちの世界にも起こり得る話だからこそ、尚更恐怖心を煽られました。

蜜蜂と遠雷

音楽をやっていてよかったと、心から思える作品でした。
音楽をやっているからこそ楽しめる映画であるな、とさえも感じました。
ただ、尺が短いのが非常に残念でした...映画のことを考えると仕方がないことなのですが、一曲一曲が違和感のあるカットのされ方をしているので、そこがとっても歯痒かったです。もっとコンチェルトの演奏を聴いていたかったし、各演奏者によって異なる各々の作品の違いを堪能したかった。
個人的には、月明かりが差し込む部屋で、風間塵くんと栄伝亜夜さんが、ドビュッシーの月の光を即興で演奏するシーンが一番好きでした。ドビュッシーがどんどんベートーヴェンの月光へと変化していく所に、非常にゾクゾクしました。
栄伝さんによるプロコフィエフのピアノコンチェルト第3番も、非常に素晴らしいものでした。本当に黒木雪音さんを見ているよう...
全体的に音楽を楽しむことができる作品でした。また、今回の映画館が満席だったことにも嬉しくなりました。もっとクラシック音楽の良さを、様々な人々に知ってもらいたい。

 

「アバウト・タイム」

今を生きることが好きになる映画。
毎日をかけがえのない日と思って生きる大切さや、タイムトラベルをすることで手に入れられるものもあれば、失うものもある。そういった一つ一つの物事の尊さを学ぶことができる作品でした。
一人の女性との恋愛のために、なんどもタイムトラベルをするティム。ちょっとずるいやり方ですが、ティムの必死さが伝わって、何度も笑ったり、目頭を熱くさせたりしました。好きな人と見ることができて本当に良かった。何度見ても大好きな作品です。

「永遠の僕たち」
死という概念に取り憑かれた若者たちの愛の話。ヘンリーのかっこよさに終始ニヤニヤしていました...